「一寸法師 4 : 鬼が島」の本文を読んで、下の問に答えなさい。
[1] 姫君、あさましきことにおぼしめして、かくていづかたへも行くべきならねど、難波の浦へ行かばやとて、鳥羽の津より舟に乗り給ふ。
[2] 折節、風荒くして、興がる島へぞ着けにける。舟より上がり見れ(a)ば、人住むとも見えざりけり。かやうに風悪く吹きて、かの島へぞ吹き上げける。
[3] とやせんかくやせんと思ひわづらひけれども、かひもなく、舟より上がり、一寸法師はここかしこと見めぐれば、いづくともなく、鬼二人来りて、一人は打出の小槌を持ち、いま一人が申すやうは、「呑みて、あの女房取り候は( )」と申す。
[4] 口より呑み候へば、目の中より出でにけり。鬼申すやうは、「これは曲者かな。口をふさげ(b)ば、目より出づる」。一寸法師は、鬼に呑まれては目より出でて跳びありきければ、鬼もおぢをののきて、「これはただ者ならず。ただ地獄に乱こそ出で来たれ。ただ逃げよ」と言ふままに、打出の小槌、杖、笞、何に至るまでうち捨てて、極楽浄土の戌亥の、いかにも暗き所へ、やうやう逃げにけり。
[5] さて、一寸法師は、これを見て、まづ打出の小槌を濫妨し、「われわれが背を大きになれ」とぞ、どうど打ち候へば、程なく背大きになり、さて、このほど疲れに臨みたることなれ(c)ば、まづまづ飯を打ち出し、いかにもうまさうなる飯、いづくともなく出でにけり。不思議なるしあはせとなりにけり。