相続税申告書を自分でつくるには
はじめに
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第1章 相続前に知っておくべきこと

相続の問題は、家族内であっても利害関係が絡むため、簡単に話せるテーマではありません。相続に関わる話題は、時として家族間に緊張感を生み、争いに発展することもあります。この章では、相続が発生する前に知っておくべき基本的な情報や、相続に関わる注意点について解説します。

1.1 家族間の相続と利害関係
相続に関する会話をする際、家族だからといって安心してすべてを話すわけにはいきません。家族内でも、相続人が複数いる場合には、それぞれの利益が絡み合うため、安易に口に出すことが後のトラブルの原因になることがあります。

例えば、父親が亡くなり、母親、息子、娘が相続人となるケースでは、娘婿や息子の妻が口を出すこともあるかもしれませんが、彼らは法律上の相続人ではありません。相続人ではない人が話し合いの場に参加すると、後々の問題がこじれることがあります。相続に関わる話し合いには、相続人以外の者は参加させないことが大切です。

1.2 相続人の確認と注意点
相続が発生した際には、まず相続人を正確に確認することが重要です。相続人は、法定相続人である場合もあれば、遺言によって指名された者である場合もあります。相続人を正確に確認しないと、後に法律上のトラブルが生じる可能性があります。

また、戸籍の確認は欠かせません。亡くなった方の過去の戸籍を遡って調べることで、相続人に該当する人が他にいないかを確認する必要があります。特に再婚や養子縁組がある場合は、相続人の確認が複雑になることがあります。
第2章 相続人の確認

相続手続きを進めるためには、まず相続人を正確に確認することが重要です。相続人の確認が曖昧なまま手続きを進めると、後に大きなトラブルに発展する可能性があります。法的に定められた相続人を確認することで、スムーズな手続きを行うことができます。

2.1 法定相続人とは
法定相続人とは、法律に基づいて相続の権利を持つ人を指します。通常、相続人は被相続人(亡くなった人)の配偶者と子供たちが該当します。子供がいない場合、被相続人の親が相続人になることもあります。また、親もいない場合には、兄弟姉妹が相続人となります。

法定相続人の確認には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、その記載内容を基に相続人を特定する必要があります。この戸籍調査が不足していると、隠れた相続人が発覚し、手続きがやり直しになることがあります。

2.2 特別なケースの相続人
相続人の確認は、複雑なケースもあります。再婚や養子縁組など、家族構成が複雑な場合には、相続人の範囲が広がることがあります。たとえば、養子縁組をしている場合、養子も法定相続人として認められます。また、再婚によって生まれた子供がいる場合、その子供も相続人として扱われます。

特別なケースでは、相続人を確定するために、さらに詳細な戸籍調査が必要になることがあります。場合によっては、専門家のアドバイスを受けることも検討すべきです。

2.3 遺言による相続人の変更
遺言が存在する場合、法定相続人以外の人が相続人になることもあります。遺言によって、特定の人物に財産を相続させることができるため、遺言の有無を確認することが重要です。遺言がある場合には、その内容に従って相続手続きを進めることになりますが、遺留分(一定の法定相続人が持つ最低限の取り分)が侵害されていないかにも注意が必要です。

第3章 財産リストを作る
相続税申告書を作成する際には、まず被相続人の財産をリストアップする必要があります。この財産リストが相続税申告書の中心となり、申告の正確性を保つために重要なステップです。
第2章 相続人の確認

相続手続きを進めるためには、まず相続人を正確に確認することが重要です。相続人の確認が曖昧なまま手続きを進めると、後に大きなトラブルに発展する可能性があります。法的に定められた相続人を確認することで、スムーズな手続きを行うことができます。

2.1 法定相続人とは
法定相続人とは、法律に基づいて相続の権利を持つ人を指します。通常、相続人は被相続人(亡くなった人)の配偶者と子供たちが該当します。子供がいない場合、被相続人の親が相続人になることもあります。また、親もいない場合には、兄弟姉妹が相続人となります。

法定相続人の確認には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、その記載内容を基に相続人を特定する必要があります。この戸籍調査が不足していると、隠れた相続人が発覚し、手続きがやり直しになることがあります。

2.2 特別なケースの相続人
相続人の確認は、複雑なケースもあります。再婚や養子縁組など、家族構成が複雑な場合には、相続人の範囲が広がることがあります。たとえば、養子縁組をしている場合、養子も法定相続人として認められます。また、再婚によって生まれた子供がいる場合、その子供も相続人として扱われます。

特別なケースでは、相続人を確定するために、さらに詳細な戸籍調査が必要になることがあります。場合によっては、専門家のアドバイスを受けることも検討すべきです。

2.3 遺言による相続人の変更
遺言が存在する場合、法定相続人以外の人が相続人になることもあります。遺言によって、特定の人物に財産を相続させることができるため、遺言の有無を確認することが重要です。遺言がある場合には、その内容に従って相続手続きを進めることになりますが、遺留分(一定の法定相続人が持つ最低限の取り分)が侵害されていないかにも注意が必要です。

第3章 財産リストを作る
相続税申告書を作成する際には、まず被相続人の財産をリストアップする必要があります。この財産リストが相続税申告書の中心となり、申告の正確性を保つために重要なステップです。
第3章 財産リストを作る
相続税申告書を作成する際には、まず被相続人の財産をリストアップする必要があります。この財産リストが相続税申告書の中心となり、申告の正確性を保つために重要なステップです。

3.1 相続財産の種類
相続財産には様々な種類がありますが、主に以下のようなものが含まれます。

不動産:土地や建物。評価額は路線価や固定資産税評価額を基準に算出されます。
現金・預金:銀行口座の預金残高や現金。これらは相続発生日の残高を基に評価されます。
有価証券:株式、債券、投資信託など。株式の評価は相続時の終値または一定期間の平均値を使います。
動産:車、宝石、美術品など。特に高額なものがある場合はその時価評価が必要です。
保険金:死亡保険金など。非課税枠があるため、その計算も必要です。
その他の資産:ゴルフ会員権、退職金、特許権なども相続財産に含まれます。

3.2 財産リストの作成
財産リストを作成する際には、全ての財産を漏れなくリストアップすることが重要です。以下の手順でリストを作成します。

不動産の評価:土地の評価は国税庁が提供する路線価や倍率方式を用いて行います。建物は固定資産税評価額を基準とします。
預金・現金の確認:銀行口座の通帳を確認し、相続開始日(被相続人の死亡日)の残高をリストに記入します。
有価証券の評価:株式や投資信託は相続開始時の評価額を調べます。証券会社に連絡し、必要な情報を取得します。
動産の確認:高額な動産がある場合、その市場価値を評価します。専門家の意見を聞くことも検討してください。
保険金の計算:生命保険金は500万円×相続人の人数まで非課税となるため、これを考慮に入れて計算します。

3.3 注意点
財産リストを作成する際の注意点として、次のポイントを忘れないようにしましょう。

相続財産の未申告は違法:隠し財産や漏れた財産が後から発覚すると、追加の相続税が課されるだけでなく、加算税や延滞税が発生する可能性があります。
負債の確認:被相続人が残した借金やローンも申告に含める必要があります。これらはマイナス財産として相続財産から差し引かれます。

財産リストを完成させることで、相続税の申告書作成がスムーズに進みます。次に、申告書に記入する具体的な方法を解説します。
第4章 普通の不動産の評価はむつかしくない
不動産は相続財産の中でも大きな割合を占めることが多く、正確な評価が求められます。とはいえ、通常の不動産評価はそれほど難しくありません。本章では、普通の不動産の評価方法について説明します。

4.1 不動産の種類
不動産には主に以下の2種類があります。

土地:住宅用地、農地、商業用地などの土地です。土地の評価は路線価方式か倍率方式を用いて行います。
建物:家屋や建物です。建物の評価は、固定資産税評価額を基準とします。

4.2 土地の評価方法
土地の評価は、相続税法に基づいて以下の方法で行われます。

路線価方式:国税庁が定める路線価を基に、土地の評価を行います。路線価は、その土地が面する道路の1平方メートルあたりの価値を示しています。路線価は国税庁のホームページで確認することができます。

路線価の確認:まず、該当する土地が面する道路の路線価を確認します。これがその土地の評価額の基準となります。
補正率の適用:土地の形状や利用状況によっては、奥行補正率や角地補正などの調整を行います。例えば、奥行が深すぎたり、間口が狭すぎる場合は、評価が減少することがあります。
倍率方式:路線価が定められていない地域の土地は、倍率方式で評価します。これは、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて評価する方法です。

4.3 建物の評価方法
建物の評価は、固定資産税評価額を基準に行います。この評価額は、市町村が毎年発行する固定資産税納税通知書に記載されています。相続財産に含まれる建物は、通常、この評価額を使って申告します。

4.4 小規模宅地等の特例
相続税の計算において、居住用や事業用の宅地については「小規模宅地等の特例」を適用できる場合があります。この特例を利用することで、最大で80%まで宅地の評価額を減額することが可能です。

居住用宅地の特例:被相続人が住んでいた住宅用地については、相続人が一定の条件を満たしている場合、その宅地の評価額を80%減額することができます。
事業用宅地の特例:被相続人が事業を行っていた土地についても、事業を引き継ぐ相続人がいれば、同様に評価額の減額が適用されます。

4.5 注意点
不動産の評価には注意が必要です。特に、以下の点に気をつけましょう。

評価が難しい不動産:例えば、不整形地や傾斜地などの評価は通常の方法では正確に評価できない場合があります。このような土地の場合は、税理士や不動産鑑定士に相談することをお勧めします。
相続人間のトラブルを避ける:不動産は高額な財産であるため、相続人間での意見の食い違いが生じやすいです。公平な評価を心がけ、専門家の意見を取り入れることが重要です。

不動産の評価を適切に行うことで、相続税の計算が正確になり、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。次章では、負債や保証について解説します。

第5章 意外な借金はないか
相続税の計算において、相続財産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産、つまり負債も含まれます。負債を適切に申告することで、相続税を軽減することが可能です。本章では、意外に見落としがちな負債について解説します。

5.1 マイナスの財産とは
相続税の申告において、マイナスの財産(負債)は「債務及び葬式費用の明細書」に記入します。代表的なマイナスの財産には以下のものがあります。

借入金: 銀行や金融機関からの借入金。ローンの残高も負債として申告できます。
未払金: 例えば、医療費や公共料金の未払金も負債として申告できます。
未納の税金: 被相続人が生前に納めるべきだった所得税や住民税などが含まれます。

5.2 見落としやすい負債
負債の中でも、見落とされがちなものがあります。以下のような負債が該当します。

親族からの借入金: 口約束で借りた場合など、正式な借入書がないことが多いですが、これも負債に含めることが可能です。証拠が残っているかどうかが重要です。
保証債務: 被相続人が他人の借金の保証人になっていた場合も、保証債務として申告できます。ただし、保証債務の請求が発生していない場合は、実際の支払いがあった後で申告することになります。
同族会社からの借入金: 被相続人が経営していた同族会社からの借入金も負債に含まれます。会社の決算書や借入契約書が証拠となります。

5.3 葬式費用
葬式費用も負債として申告できますが、注意が必要です。すべての葬儀関連費用が認められるわけではありません。

認められる費用:

葬儀本体の費用(葬儀会場の費用や棺、祭壇など)
火葬、埋葬、納骨にかかる費用
葬儀に関わる飲食費(会葬者への接待費用)
認められない費用:

香典返しの費用
初七日や四十九日法要の費用
墓石や仏壇の購入費用
これらの費用を区別して申告することが重要です。

5.4 リース契約がある場合
リース契約に基づく負債についても注意が必要です。リース契約の種類によっては、負債として申告できない場合もあります。例えば、オペレーティングリースのように、所有権が移転しないリース契約では、未払のリース料を負債として申告できません。しかし、所有権が移転するファイナンスリースであれば、負債として扱うことができます。

5.5 連帯保証について
連帯保証も債務の一部として申告できる可能性があります。ただし、連帯保証の場合、実際に保証債務を履行しない限りは債務とみなされないことが多いです。保証債務が発生した場合、実際に支払った時点で債務控除を行います。

5.6 まとめ
意外と見落とされがちな負債をしっかり確認して申告することが、相続税の負担を軽減する鍵となります。親族間での借入や保証債務、リース契約など、さまざまな負債を正確に把握して、適切に申告することが大切です。

次章では、税額の計算について詳しく説明します。


第6章 税額の計算

相続税の申告において、最も重要なステップの一つが税額の計算です。この章では、税額を正しく計算するための方法を詳しく解説します。

6.1 相続税の基本的な計算方法
相続税の基本的な計算は、以下の流れで進めます。

1. 課税遺産総額の算定
   相続財産から、基礎控除額(3000万円 + 600万円×法定相続人数)を差し引き、課税遺産総額を算出します。基礎控除を超える財産に対して相続税が課されます。

2. 相続人ごとの課税価格の算定
   各相続人が法定相続分に応じて取得したものとして、それぞれの課税価格を算定します。

3. 税率の適用
   課税価格に基づいて、税率を適用します。税率は10%から55%まであり、取得財産の金額に応じて段階的に設定されています。

4. 控除の適用
   各相続人の税額に対して、配偶者控除や未成年者控除、障害者控除などの控除を適用します。

6.2 課税価格の算定
課税価格は、相続財産から非課税財産や債務、葬儀費用を差し引いて算出されます。具体的には以下の項目を考慮します。

- 非課税財産
  生命保険金の一部や、死亡退職金の一定額は非課税となります。
 
- 債務控除
  被相続人が残した借金や未払金、葬儀費用などは、相続財産から控除することができます。

6.3 税率の適用
相続税は累進課税方式で、財産の価額に応じて税率が異なります。以下は相続税の税率表です。

| 課税価格(万円) | 税率 | 控除額(万円) |
| ---------------- | ---- | ------------- |
| 1,000万円以下    | 10%  | なし          |
| 3,000万円以下    | 15%  | 50万円        |
| 5,000万円以下    | 20%  | 200万円       |
| 1億円以下        | 30%  | 700万円       |
| 2億円以下        | 40%  | 1,700万円     |
| 3億円以下        | 45%  | 2,700万円     |
| 6億円以下        | 50%  | 4,200万円     |
| 6億円超          | 55%  | 7,200万円     |

この表を用いて、各相続人の課税価格に税率を適用し、税額を計算します。

6.4 控除の適用
以下の控除が適用される場合があります。

- 配偶者控除
  配偶者が取得した財産については、1億6000万円まで、または法定相続分まで相続税がかかりません。

- 未成年者控除
  相続開始時に未成年である相続人については、満20歳までの年数1年につき10万円が控除されます。

- 障害者控除
  相続開始時に85歳未満の障害者がいる場合、その障害者が満85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)が控除されます。

6.5 相続税の納付
相続税は、原則として相続開始から10ヶ月以内に申告し、納付する必要があります。納付期限までに支払いができない場合は、延納や物納を申請することが可能です。

- 延納
  現金での一括納付が難しい場合、一定の条件のもと、延納(分割払い)を申請することができます。

- 物納
  不動産などの現金以外の財産で納税することができる制度です。ただし、物納が認められるのは限られたケースのみです。

6.6 税額の計算例
具体例を挙げて税額を計算してみましょう。


- 相続財産:1億2000万円  
- 法定相続人:3人(配偶者1人、子供2人)

1. 基礎控除額の計算
   基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 3人 = 4800万円

2. 課税遺産総額の算定
   課税遺産総額 = 1億2000万円 - 4800万円 = 7200万円

3. 法定相続分に応じた課税価格の算定
   - 配偶者:7200万円 × 1/2 = 3600万円  
   - 子供1人あたり:7200万円 × 1/4 = 1800万円

4. 税率の適用
   - 配偶者:3600万円 × 15% - 50万円 = 490万円  
   - 子供1人あたり:1800万円 × 15% - 50万円 = 220万円

5. 相続税の総額
   490万円 + 220万円 × 2 = 930万円

6. 控除の適用(配偶者控除)
   配偶者控除により、配偶者の税額は0円になるため、最終的な税額は子供2人分の440万円となります。

6.7 まとめ
税額の計算は、各相続人の取得財産や控除の適用状況により異なります。正確な計算を行うためには、各相続人の状況に応じた税率の適用や控除をしっかり確認することが重要です。

次章では、民法や登記に関連する最新の情報について解説します。
第7章 民法、登記情報などの最新情報

1. 法定相続情報証明制度

   平成29年5月から法定相続情報証明制度が開始されました。この制度は、相続に関連する遺産の承継やその後の不動産の登記手続きなどをスムーズに進めるためのものです。この制度を利用することで、従来の手続きよりも効率的に相続に関わる書類を取得し、使うことができます。

   - 手続きの必要書類
     - 被相続人(亡くなられた方)の戸籍(除籍)謄本
     - 住民票の除票
     - 相続人全員の戸籍謄本

   - 法定相続情報一覧図
     これらの資料から「法定相続情報一覧図」を作成し、住所地の登記所(法務局)に申出書を提出することで、一覧図を無料で必要数交付してもらえます。この一覧図は、戸籍謄本の代わりに税務署、銀行、不動産登記など様々な場面で使用可能です。

2. 預貯金の仮払い制度

   預貯金の仮払い制度は、相続開始後に遺産分割協議が終わる前でも、一定額の預貯金を仮に引き出すことができる制度です。この制度を活用することで、葬儀費用や急な生活資金などを相続人が利用できるようになります。

3. 戸籍関係書類の簡易取得

   現在では、戸籍関係の書類が、住んでいる市町村以外でも簡単に取得できるようになりました。この便利な制度により、全国の市町村から戸籍謄本を取り寄せることが可能になっています。

4. 自筆証書遺言の保管制度

   自筆証書遺言の保管制度は、法務局で遺言書を保管することができる制度です。この制度を利用することで、遺言書が家庭裁判所での検認が不要となり、相続手続きがスムーズに進められるようになります。

5. 相続登記の義務化

   令和5年4月1日から相続登記が義務化されました。これにより、不動産の相続が発生した際には、相続登記を迅速に行うことが法律で義務付けられ、放置された相続登記の未了による問題が解消されることが期待されています。

6. 相続土地の国庫帰属制度

   相続した土地を手放したい場合、新たに国庫帰属制度が設けられました。この制度を活用することで、管理できない土地や不要な土地を国に返還することが可能となります。

7. 配偶者居住権

   配偶者居住権は、配偶者が亡くなった場合、その配偶者が引き続き住んでいた家に住み続ける権利を保障するものです。これにより、配偶者は安心してその家に住み続けることができ、資産分割の調整も柔軟に進められます。

8. 遺留分侵害請求権の金銭債権化

   令和5年から遺留分侵害請求権が金銭債権として処理されるようになりました。これにより、相続人間のトラブルを避けるために、遺留分の侵害に対して金銭での支払いが求められるようになり、相続問題の解決がスムーズになることが期待されています。

9. 所有者不明土地・建物の管理制度

   所有者不明の土地や建物に対する管理制度が整備され、適切に管理されない不動産に対する問題を解決するためのルールが決まりました。この制度により、所有者が不明であったり管理が行われていない不動産に対しての取り扱いが改善されます。


第8章 相続に関わる専門家の守備範囲の違いと実際を知る

相続において専門家の助けが必要となる場面は多くありますが、その専門家がどの範囲でどのような役割を果たすのかを理解しておくことが重要です。ここでは、税理士、弁護士、司法書士の各専門家の守備範囲と、実際の相続の場面での対応について説明します。

1. 税理士の守備範囲
税理士は、相続税の申告や税務の専門家です。相続税の計算や、税務署とのやり取りに関しては税理士が頼りになる存在です。税理士は特に、財産の評価や相続税額の計算、相続税の申告書の作成などをサポートします。また、相続税法の特例を活用して、税負担を軽減するためのアドバイスも提供します。

相続税に関連する手続きには複雑な書類が必要になることが多く、一般の方がこれを正確に作成するのは難しいため、税理士の力を借りることでミスを防ぐことができます。

2. 弁護士の守備範囲
弁護士は、相続のトラブルや争いが生じた場合に頼りになる存在です。相続人同士での争いや、遺産分割協議が難航した場合に、法的に正しい解決を図るために弁護士が介入します。例えば、相続人同士での話し合いが難しい場合や、遺産分割協議書の作成がうまくいかない場合、弁護士のサポートが必要です。

また、遺言書の作成や執行についても弁護士に依頼することで、法的に問題のない形で進めることができます。

3. 司法書士の守備範囲
司法書士は、相続に関連する登記や書類作成の専門家です。遺産分割に伴う不動産の名義変更や、相続人の確認のための戸籍謄本の取得、相続登記など、法的な手続きのサポートを行います。相続登記に関しては、司法書士が代理で登記所に提出することができるため、手続きがスムーズに進むことが多いです。

また、相続放棄や限定承認などの手続きを行う際も、司法書士のサポートが役立ちます。

4. 専門家の選び方
相続に関連する問題は、税務、法務、不動産など多岐にわたります。そのため、各分野の専門家を適切に選ぶことが重要です。一般的には、相続税の申告が必要な場合は税理士、法的な争いが予想される場合は弁護士、登記に関する手続きが必要な場合は司法書士を選ぶと良いでしょう。

複数の専門家が協力して対応する場合もありますので、状況に応じて、どの専門家に相談すべきかを判断することが求められます。

5. 専門家とのトラブルを避けるために
相続においては、専門家との契約内容を明確にし、必要な手続きをスムーズに進めることが重要です。トラブルを避けるためには、以下の点に注意しましょう。

- 専門家の役割や費用を事前に確認する
- 依頼内容を明確にし、書面で残す
- 適切な質問をして、依頼する専門家の実績や対応を把握する

特に費用については、後からトラブルになることが多いので、見積もりや契約内容をしっかり確認することが大切です。

第9章 その他

相続税の申告に関して、これまでの章では基本的な手順や注意事項について説明してきました。しかし、相続税申告の際には、特殊なケースや状況に応じて追加の対応が必要になることがあります。この章では、一般的な相続税の申告書に加えて考慮すべき点や、特例、注意すべき事項について取り上げます。

1. 特例の適用について
相続税には、特例措置が数多く存在します。これらの特例を適用することにより、相続税の負担を軽減できるケースがあります。主な特例には次のようなものがあります。

- 小規模宅地等の特例
  相続財産の中に居住用や事業用の土地がある場合、その土地について特例が適用されることがあります。居住用の土地については、最大330平方メートルまでの部分が80%評価減されるため、非常に有利です。

- 配偶者に対する相続税額の軽減
  配偶者が相続する財産については、一定額まで相続税が課されないという特例です。具体的には、法定相続分または1億6千万円までの財産について相続税がかからないため、配偶者がいる場合はこの特例を利用することが大切です。

2. 遺言書と相続税
遺言書の有無も、相続税の申告に影響を与える場合があります。遺言書が存在する場合、遺産分割の方法が明確であれば、その内容に基づいて申告が進められますが、遺言書が存在しない場合や、相続人間で意見が分かれる場合は遺産分割協議を行う必要があります。

また、相続財産の分割方法が決まらない場合でも、相続税の申告は期限内に行う必要があります。この場合、申告後に遺産分割が決定した場合には、更正の請求や修正申告を行うことで対応します。

3. 二次相続の対策
一次相続(例えば、父親が亡くなった場合)の後、すぐに二次相続(例えば、母親が亡くなる場合)が発生することもあります。二次相続を考慮し、一次相続の際にどのように財産を分割するかが重要です。

相続税は、財産を受け取る相続人に課税されますが、二次相続時にはさらに相続税がかかる可能性があるため、二次相続を見据えた対策を講じることが節税のポイントとなります。

4. その他の相続財産に関する注意点
相続財産には、不動産や預貯金、株式などの有価証券以外にも、相続税の対象となるものがあります。

- ゴルフ会員権
  ゴルフ会員権も相続財産の一部として扱われるため、その時点での時価に基づいて評価されます。評価額は、会員権市場の動向に左右されるため、相続発生時にしっかり確認することが大切です。

- 著作権や特許権
  著作権や特許権などの知的財産権も相続財産に含まれます。これらの評価は難しい場合がありますが、専門家の助けを借りて正確に評価することが求められます。

- 寄付の活用
  相続財産の一部を公益法人などに寄付することで、相続税の負担を軽減できる場合があります。寄付金が適正に使われることを確認しながら、相続税対策としての寄付の活用を検討することも一案です。

5. 相続税の納税猶予
相続税の納税は、原則として相続発生から10ヶ月以内に行わなければなりませんが、場合によっては納税が困難なこともあります。特に不動産が相続財産の大部分を占めている場合、納税資金を現金で用意することが難しい場合もあります。

このような場合、延納や物納の制度を活用することができます。延納は、相続税を分割して納付する制度で、物納は不動産などの財産を現物で納付する制度です。これらの制度を適切に利用することで、納税の負担を軽減することができます。
第10章 令和6年1月から変わる相続税・贈与税のあらまし

2024年から施行される改正は、相続税および贈与税に大きな影響を与えるものとなっています。特に、家族間での相続や贈与を巡るルールの変更が、これまでの節税対策や資産運用における選択肢を大きく変えることが予想されます。この章では、令和6年1月から施行される主な改正点を見ていきましょう。

1. 贈与税と相続税の一体化
今回の改正で特に注目されるのが、贈与税と相続税の一体化です。これまで、贈与税は相続税とは別枠で課税されてきましたが、令和6年からは、相続開始前3年間に行われた贈与については、相続財産に加算して課税されることとなります。このため、短期的な贈与による節税効果が限定されることになります。

例えば、相続開始前の3年間に贈与を受けた財産については、相続財産に加算され、相続税の対象となります。これにより、単に生前贈与を行うだけでは、節税効果が期待できない可能性があります。この制度は、資産を分散する目的の贈与に対しても注意が必要です。

2. 相続税の基礎控除額の見直し
相続税の基礎控除額も引き上げられる予定です。これにより、一定の範囲内の財産については相続税の負担が軽減されることが期待されます。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人数」という従来の計算式が変更されるため、今後の相続税対策においては基礎控除額をしっかりと把握しておくことが重要です。

3. 小規模宅地等の特例の改正
これまで、一定の要件を満たす場合に適用されてきた小規模宅地等の特例が一部改正されます。具体的には、居住用や事業用の宅地に対する評価額の減額措置が見直される予定です。この改正により、居住用宅地等の評価額の減額率が変更される可能性があり、これまでの相続対策に影響を与えることが予想されます。

4. 配偶者控除の見直し
現行の相続税制度では、配偶者に対する控除が大幅に優遇されており、配偶者が相続する財産については大きな減額が適用されてきました。改正後も配偶者控除は維持されますが、一部の条件については見直しが行われる予定です。具体的な内容は、控除額の変更や、財産の種類に応じた適用条件の変更が考えられます。

5. 非上場株式の相続税評価の変更
非上場株式を保有する企業のオーナーや経営者にとっては、相続税評価が大きな関心事です。今回の改正では、非上場株式の評価方法が見直されることが予定されています。これにより、企業の株式評価額が変動し、相続税額に影響を及ぼすことが考えられます。特に、家業を引き継ぐ場合や、企業の株式を後継者に移転する場合には、今後の評価方法の変動に注意が必要です。

6. 相続税申告書の簡素化
相続税の申告書類も今回の改正に伴い、簡素化されることが予定されています。特に、電子申告の普及を目指した措置が講じられることで、申告手続きの負担が軽減される見込みです。これにより、相続税申告のハードルが低くなり、より多くの人が自分で申告を行えるようになることが期待されています。

7. まとめ
令和6年1月から施行される相続税・贈与税の改正は、今後の相続税対策に大きな影響を与えることが予想されます。これまでの生前贈与や相続対策が通用しないケースも増えるため、早めの情報収集と対策が重要です。また、改正の内容を正確に把握し、自分に合った対策を講じることで、相続に伴う税負担を最小限に抑えることができます。

今後も制度の変更がある可能性があるため、税理士や専門家との相談を通じて適切な対応を進めることが重要です。

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