東京歯科大学市川総合病院精神科では、現在、約1年間の研究に協力してくださる軽度のアルツハイマー型認知症の方を320名募集しています。
もはや国民病ともいえる認知症ですが、特にその6割以上を占めるアルツハイマー病の治療法は確立されておらず、症状進行を薬で予防しているのが現状です。しかし、その効果はまだ満足できるレベルにあるとは残念ながら言えません。そこで、薬以外の選択肢の可能性を広げたいと、私たちは米ぬかの栄養成分をアルツハイマー型認知症の患者さまに試していただき、その医学的効果を検証したいと考えています。
具体的には、穀物や果物の皮などに多く含まれるポリフェノールの一種であるフェルラ酸と呼ばれる成分です。すでに一部の認知症の診療医の間では利用されており、認知症予備軍であるグレーゾーンのMCI(軽度認知障害)の方に対しては医学的効果も報告されています(C. Kudoh et al., J Alzheimers Dis Rep 4, 393, 2020)。一方で、認知症である患者さんへの効果は未だ、厳密な検証によっては証明がなされていません。
そこで市川総合病院精神科では、医師主導の特定臨床研究法に基づき、世界初の試みとして、その効果証明のための無作為化比較試験(RCT)を行うことになりました(以下、図「研究の流れ」を参照)。参加条件に合う方はぜひ、ご参加いただけましたら幸いです。
研究に参加いただけた場合には、アルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドベータという異常タンパク質の血中濃度が測定できたり(動物実験では、フェルラ酸がこのアミロイドベータを5~7割減らすことも証明されています)、開始時・半年後・1年後の計3回にわたって2時間程度の専門家による心理検査で、丁寧に認知症の進み具合いが評価されます。
ふるってのご応募お待ちしております。
*無作為化比較試験(RCT):抽選で効果の期待されるサプリか、プラセボか、のいずれかのグループに振り分けられ、毎日摂取していただきます。研究期間中は何を摂取しているかは伏せられていますが、1年後にどちらのグループであったかは伝えられます。
**現在、通院治療のない方でも、最近物忘れが目立ってきて心配されている場合には、東京歯科大学市川総合病院の認知症外来で通常診療を受け、その後に条件に該当する場合は、続けて研究に参加することも可能です。
【研究に関する問い合わせ】
東京歯科大学市川総合病院 精神科
認知症サプリ研究事務局
研究責任者 精神科医 宗 未来
研究専用電話:047-707-3377(平日10~16時)
メール:komenuka88@gmail.com
【研究の参加条件】
1)東京歯科大学市川総合病院もしくは他院に通院中で、軽度アルツハイマー型認知症の診断を受けている(アルツハイマー型以外の認知症とは診断されていない)
2) 既にドネペジル(またはアリセプト)錠5mg/日またはドネペジル貼付剤(アリドネパッチ)27.5mg/日を1ヶ月以上内服している(5mg未満もしくは5mgを超えての内服の場合は不可)
3)ドネペジル(またはアリセプト)以外に抗認知症薬など認知機能に影響を与える薬剤を使用していない
4)65歳以上で85歳以下(同意取得時)の男女
5)本人の自由意思による文書同意が得られる
6) 著しい視聴覚障害がなく、日本語を母国語とする
7)本研究に支障を生じるような重篤な身体疾患がない
8)指定された期日に計6回来院し(約3ヶ月に一度のペースで)、必要な検査・治療が可能
9)アルコール依存症(または現在も大酒家)、または他の薬物依存症ではない
10) 過去1年以内にうつ病や躁うつ病、統合失調症で治療を受けておらず、抗精神病薬もしくは抗うつ薬、抗てんかん薬を内服していない
11)不眠症治療以外を目的として抗不安薬を内服していない
12)現在、うつ状態ではない
13)レビー型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病)、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性脳梗塞、 正常圧水頭症、脳腫瘍、てんかん、硬膜下血腫、多発性硬化症、脳炎、脳の手術後や外傷性の脳障害、精神状態が不安定になるほどの甲状腺疾患等ではない
14)若年性(65歳未満発症)のアルツハイマー型認知症ではない
15)研究が困難になるような幻視や興奮などの精神症状、行動異常を認めない
16)アナフィラキシーショックなどの重篤な食品・薬物アレルギー歴がない
17) 他の医薬品やなんらかの治験に現在もしくは過去6ヵ月以内に参加していない