「狩の使 2:夢うつつ」の本文を読んで、下の問に答えなさい。
[1] つとめて、いぶかしけれど、わが人をやるべきにしあらねば、いと心もとなくて待ちをれば、明けはなれてしばしあるに、女のもとより、詞はなくて、
君や来しわれやゆきけむおもほえず夢か現か寝てかさめてか
[2] 男、いといたう泣きてよめる、
かきくらす心のやみにまどひにき夢うつつとは今宵さだめよ
とよみてやりて、狩に出で(a)ぬ。
[3] 野に歩けど、心はそらにて、今宵だに人しづめて、いととく( あふ )むと思ふに、国の守、斎の宮の頭かけたる、狩の使ありと聞きて、夜ひと夜、酒飲みしければ、もはらあひごともえせで、(ア)明けば尾張の国へたちなむとすれば、男も人しれず血の涙を( 流す )ど、えあはず。
[4] 夜やうやう明けなむとするほどに、女がたより出だす盃の皿に、歌を書きて出だしたり。取りて見れば、
かち人の渡れど濡れ(b)ぬえにしあれば
と書きて末はなし。
[5] その盃の皿に続松の炭して、歌の末を書きつぐ。
またあふ坂の関はこえなむ
とて、(イ)明くれば尾張の国へこえにけり。
[6] 斎宮は水の尾の御時、文徳天皇の御女、惟喬の親王の妹。