「翻訳苦心談1:読みはじめ」の本文を読んで、下の問に答えなさい。
[1] さて、この書を読みはじむるに、如何やうにして筆を立つべしと談じ合ひしに、
[2]「とてもはじめより内象のことは知れがたかるべし。この書の最初に仰伏全象の図あり。これは表部外象のことなり。その名処はみな知れたることなれば、その図と説の符号を合せ考ふることは、取付きやすかるべし。図のはじめとはいひ、かたがた先づこれより筆を取り初むべし」と定めたり。
[3] 即ち解体新書形体名目篇これなり。
[4] その頃は、デの、ヘットの、また、アルス、ウエルケ等の助語の類も、何れが何れやら心に落付きて弁へぬことゆゑ、少しづつは記憶せし語ありても、前後一向にわからぬことばかりなり。
[5] たとへば、「眉(ウエインブラーウ)といふものは目の上に生じたる毛なり」とあるやうなる一句も、彷彿として、長き春の一日には明らめられず、日暮るるまで考へ詰め、互ひににらみ合ひて、僅か一二寸ばかりの文章、一行も解し得ることならぬことにてありしなり。