日時: 2022年8月29日(月) 16時45分〜17時45分 +質疑応答(18時終了予定)
Date: August 29, 2022 (Mon.) 16:45–17:45 + question and answer sesion (until 18:00)
講演者: 佐藤 光汰朗 氏 (東北大学大学院理学研究科 D2)
題目: 不可逆的に時間発展する変分不等式の適切性と解の定性的性質
概要: 本発表では,不可逆的発展の制約条件がついた時間発展する楕円型変分不等式の適切性およびその解の持つ定性的性質について論じる.ここで扱う変分不等式は,劣微分作用素を用いることによりいわゆる二重非線形タイプの(非消散型)放物型方程式へと書き換えられるが,作用素が特異性を持ちかつ退化しているため,70年代以降にBarbu や Araiらによって整備された可解性の理論が直ちには適用できないという困難点を抱えている.一方,時間微分項の退化性によって解は勾配流などのいわゆる消散型方程式では成り立たないいくつかの固有な定性的性質を持ち,それらの性質は脆性材料における亀裂の準静的進展現象を特徴付けるものとして1998年にFrancfort-Marigoによって定式化された3つの発展則(不可逆性,(一方向的)エネルギー平衡条件,エネルギー保存則)と対応している.解の構成はいわゆるminimizing movement schemeに基づいて行われ,発表ではこのスキームが解のアプリオリ評価や前述の定性的性質を導く際に重要な役割を果たすことについても説明する.