「二十日の夜の月」の本文を読んで、下の問に答えなさい。
[1] 二十日の夜の月、出でにけり。山の端もなくて、海の中よりぞ出で来る。
[2] かうやうなるを見てや、昔、阿倍仲麻呂といひける人は、唐土に渡りて、帰り来ける時に、船に乗るべき所にて、かの国人、馬のはなむけし、別れ惜しみて、かしこの漢詩作りなどしける。飽かずやありけむ、二十日の夜の月出づるまでぞありける。その月は海よりぞ出で( ア )。
[3] これを見てぞ、仲麻呂の主、「わが国にかかる歌をなむ、神代より神も詠ん給び、今は上中下の人も、かうやうに別れ惜しみ、喜びもあり、悲しびもある時には詠む」とて、詠めりける歌、
青海原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも
とぞ詠めりける。
[4] かの国人、聞き知るまじく思ほえたれども、言の心を、男文字に様を書き出だして、 ここの言葉伝へたる人に言ひ知らせければ、心を聞き得たりけむ、いと思ひの外になむ賞で( イ )。唐土とこの国とは、言異なるものなれど、月の影は同じことなるべければ、人の心も同じことにやあらむ。
[5] さて、今、そのかみを思ひやりて、ある人の詠める歌、
都にて山の端に見し月なれど波より出でて波に こそ( ウ )