「ちごの空寝」の本文を読んで、下の問に答えなさい。
[1] これも今は昔、比叡の山に児ありけり。僧たち、宵のつれづれに、「いざ、かいもちひせん」と言ひけるを、この児、心よせに聞きけり。
[2] さりとて、しいださんを待ちて寝ざらんも、わろかりなんと思ひて、かたかたによりて、寝たるよしにて、出で来るを待ちけるに、すでにしいだしたるさまにて、ひしめきあひたり。
[3] この児、定めておどろかさんずらんと待ちゐたるに、僧の「物申しさぶらはん。おどろかせ給へ」と言ふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへんも、待ちけるかともぞ思ふとて、今一声よばれていらへんと、念じて寝たるほどに、
[4] 「や、な起こしたてまつりそ。幼き人は寝入り給ひにけり」といふ声のしければ、あなわびしと思ひて、今一度起こせかしと思ひ寝に聞けば、ひしひしとただくひにくふ音のしければ、ずちなくて、むごの後に「えい」といらへたりければ、僧たち、笑ふことかぎりなし。