2022年9月17日(土)14:00-17:00
シロアリにおける繁殖個体の多産と長寿を支える分子基盤
田﨑 英祐(新潟大学理学部 助教)
多様で複雑な寿命の仕組みを紐解くことは、生物学における重要課題の一つである。寿命研究には短命なモデル生物を用いるのが一般的であるが、本質的に短命の生物から得られる情報には限界があり、圧倒的な長寿を実現するメカニズムについては理解の空白を生んでいる。一方で、繁殖分業の進化を遂げた社会性昆虫のシロアリには、自然選択の結果、王と女王の寿命が単独性昆虫の数百倍以上にもなった種が存在する。さらに、彼らは生物一般に見られる繁殖と寿命のトレードオフを打破しており、巣の中で最も繁殖活性が高い個体でありながら最も長命である。他に類を見ない彼らの「活動的長寿」を実現する分子基盤を明らかにすることで、従来の短命なモデル生物の研究では到達しえない寿命研究の新しい領域を開拓することが可能である。本講演では、シロアリの繁殖個体である女王(と王)の活動的長寿を支える抗酸化機構と代謝機構について最新の知見を紹介するとともに、未だ謎の多い彼らの巣内行動の一部も紹介し、議論していきたい。
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