兼題
・蛍(ほたる)
大螢ゆらりゆらりと通りけり 一茶
親一人子一人螢火光りけり 久保田万太郎
ゆるやかに着てひとと逢ふ螢の夜 桂信子
初めての螢水より火を生じ 上田五千石
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子
・黴(かび)
光るもの優勝盃や黴の宿 久米三汀
黴のアルバム母の若さの恐ろしや 中尾寿美子
怠りし聖書の黴を怖れけり 加藤汀子
・枇杷(びわ)
灯や明し独り浴後の琵琶剝けば 石塚友二
枇杷買って舷梯のぼる夜の雨 橋本多佳子
磯の香に峙つ山も枇杷のころ 水原秋桜子
やはらかな紙につつまれ枇杷のあり 篠原梵
・青嵐(あおあらし・せいらん・夏嵐)
長雨の空吹き出だせ青嵐 素堂
青嵐人は山下にありて行く 大谷句仏
鍵かけてわが家の小さき青嵐 尾形不二子
青あらし雲もからすも横向きに 遠井俊二
夏嵐机上の白紙飛び尽くす 正岡子規