理論化学会は2019年6月にその前身の理論化学研究会から学会に昇格し、コロナ禍の困難の中、活発な学会活動を開始しています。この学会の立ち上げに際して、理論化学の学問的将来展望、学会の将来構想、関連コミュニティなどを検討するため『将来構想委員会』（https://rkk-web.jp/committee.html）が設置されました。このたび活動の一環として、理論化学・計算化学の近未来予測のアンケート調査を行うことになりました。1989年に日本化学会情報化学部会が同種のアンケート調査を行っています。３０年前の「将来展望」の集計結果（CICSJ Bulletin, 8(1), 46 (1990).）を読みなおすと、実現時期のズレはともかく、当時の夢の多くが現実のものになりつつあることに驚かされます。

　本学会は理論化学研究会の頃から、化学分野における基礎理論や計算手法、およびそれらの応用を主題としてきました。今後もこの伝統を継承しながら、化学の多方面の発展に寄与していくものと期待されます。最近、社会全体の変革期にあってグローバルな観点からの環境問題、エネルギー問題が大きく取り上げられています。そしてこれらの問題解決の主役を演じられるのも化学です。急成長しているデータ科学や機械学習に基づく新方法、および近い将来実用化されるであろう量子コンピューティングを強力な武器として、理論化学者のターゲットが大きく広がって行くことは必定です。

　今回のアンケートは研究者に同じ方向を向いてもらうことを目的にするものではありません。むしろ2020年において私達の手渡すバトンが「同床異夢」として異なる世代間で、また異なる分野間に引き継がれていけば、間接的に、私たちの将来に大きな飛躍の種となるのでは、と願ってのことです。日常的に忙しくされている皆様に恐縮ですが、少しだけ息を抜いて、数十年後の化学の発展に想いを馳せ、今後の理論化学・計算化学の発展によって実現して欲しい夢を語っていただきたいと思います。

　今回のアンケートに対するご意見・ご質問などございましたら、最後のページにある自由回答欄、または以下のメールアドレスにお願いいたします。
E-Mail：questionnaire@rkk-web.jp
（担当：藪下、清野、横川）