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2022年07月15日 15:10-16:40
報告者:武田史郎(京都産業大学)
論題: 応用一般均衡モデルによるCO2削減の地域別効果の分析
場所: 神戸大学経済学部 本館2会大会議室
要旨:
今後、日本では本格的に温暖化対策が導入されていく見通しだが、地域の特性の差により、同じ温暖化対策であっても、その効果は地域間で異なってくる可能性がある。そこで、本研究では、日本を複数地域に分割した応用一般均衡モデルを用いて、炭素税によるCO2削減策の経済的影響を地域別に分析している。
モデルには2011年の47都道府県間表をベースにした10地域・19部門の静学的なモデルを利用した。分析する政策としては、炭素税によって日本全体でのCO2排出量を20%削減するという政策(全国一律での炭素税)を想定し、炭素税収の各地域の家計への分配方法として、S1)人口比に応じて分配、S2)炭素税を徴収した地域にそのまま分配、S3)各地域の家計の所得の変化が均等になるように分配という3つのシナリオを取り上げた。また、日本全体としての20%削減ではなく、各地域が20%ずつ削減するというシナリオ(S4)も分析した。以上のような設定のもと、シミュレーションでは、削減に必要な炭素税率、各地域の生産、所得への影響、個々の産業への影響などを分析した。
主な分析結果は以下の通りである。まず、S1~S3のどのシナリオでも20%削減に必要な炭素税率は約17,000円/トンとなった。また、日本全体として20%削減という政策の場合、地域毎の削減率は大きく異なってくるという結果となった。
S1とS2では一人当たり域内総生産(GRP)、一人当たり所得のどちらへの効果についても地域によって非常に大きな差が生じた。特に、一人当たりの所得は増加する地域もあり、一人当たりGRPへの効果以上に地域差が大きいという結果となった。S3でも一人当たりGRPへの効果は地域差が大きいということは変わらなかった。S1~S3の結果より、炭素税収の分配方法は一人当たりの所得への効果には強い影響を与えるが、一人当たりGRPへの効果にはほとんど影響しないということになる。各地域が20%ずつ削減するというS4においても、一人当たりGRP、一人当たり所得への効果の地域差が非常に大きいという結果は同じであった。
 感度分析として、モデル、パラメータについての設定を変更した様々なケースも分析したが、多くのケースでは基準となるケースと大きな差は生じなかった。ただし、失業を許容するモデルに変更した場合のみ、炭素税導入のマイナスの効果が大きく拡大するという違いが生じた。
 本研究のシミュレーション結果に従えば、CO2削減の効果は地域間で大きく異なる可能性が高いということになる。よって、CO2削減にともなう地域間での偏った負担を避けるには、削減策の設計の際に負担の偏りの是正策(例えば、炭素税収の分配方法)も同時に考慮していく必要があると思われる。 

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