出来成人先生の御略歴とお悔やみのお言葉について
出来成人先生は1945(昭和20)年6月16日に大阪にて生を受けられ,1969年神戸大学工学部工業化学科を卒業,1971年同大学院工学研究科修士課程工業化学専攻を修了されました.その後研究生を経て1973年工学部工業化学科に文部技官として着任後,助手,講師,助教授と昇任され,1995年に工学部応用化学科教授となられました.その間,一貫して電解質溶液の構造・物性を中心とした溶液物性の研究を続けられ,得られた知見を下に,異相共存系の液相物性,液相析出法による酸化物薄膜合成,緩和分散法による金属ナノ粒子の調製等に関わる多くの研究業績を残されました.また神戸大学においては連携創造本部長,評議員を歴任された他,学会活動においては電気化学会関西支部長,理事,副会長,溶融塩委員会委員長等を歴任されました.2009年3月,神戸大学を定年により退職された後は同年10月から山梨大学燃料電池ナノ材料研究センターに副センター長・特任教授として着任され,同センターのプロジェクト研究の推進に携わっておられました.JST, NEDO等で行われている研究プロジェクト推進にも携わられ,ご逝去の日まで山梨大学客員教授としてご活躍されておられたところでした.これらの成果につきましては多くの学術論文,特許に記されておられる他,兵庫県科学賞,同 功労賞,電気化学会溶融塩委員会溶融塩賞,電気化学会賞・武井賞,同功績賞 等,業績にもとづいた多くの受賞をされておられます.
先生は2018年始めにご病気を得られましたが,3年半にわたる闘病生活の中でも常に前向きに活動されておられました.プロジェクト研究のサイトヴィジットや学会・委員会参加を通して,多くの後進の研究者の指導・激励をしておられただけでなく,療養中も登山やスキーを楽しまれる等,一時期は状況がかなり好転されておられました.しかしながら,この8月に再発の兆候が見られ,残念ながら10月18日に薬効甲斐なくご逝去されました.ご生前,2020年以降のコロナ禍により,思うように出かけたりすることができないことを非常に残念に思われ,感染症の拡大が収まるのを待っておられた矢先でございました.
このたびの訃報を受け,故人の御薫陶を受けた多くの卒業生を始め,各界の皆様におかれましては,故人を偲び,共に御冥福をお祈りする機会をお望みのことと存じます.しかしながら,新型コロナウィルス感染症の状況を見通すことが難しい中で,皆様にお集まりいただき故人を偲ぶ機会をもつことは未だ行い難く,故人も望んでおられなかったことを伺っております.
そこで,奥様とご相談の上,誠に僭越ながら,先達の遺志を継ぐ者としてご関係の皆様のお悔やみのお気持ちを故人の霊前にお届けし,故人を偲ぶ機会に代えさせていただきたく存じます.ご賛同いただけるようでしたら,誠に簡単ではございますが,ご芳名とお悔やみのお言葉をいただければ幸甚でございます.
ここに謹んで出来成人先生の御冥福をお祈りいたします.
合掌
令和3年10月
神戸大学大学院工学研究科応用化学専攻
教授 水畑 穣