可視領域では、回折限界を超えられる結像手法として、超解像法と呼ばれる手法が提案・実用化されています。超解像法は、主に光学的手法と画像処理的手法の二つに分類されますが、ここでは、光学顕微鏡の回折限界を超えた空間分解能を実現する光学的手法を指すこととします。具体的には、共焦点顕微鏡をベースとして、確率的光学再構築顕微鏡(Stochastic optical reconstruction microscopy; STORM)、構造化照明顕微鏡(Structured illumination microscopy; SIM)、誘導放出抑制法(Stimulated emission depletion; STED)などが開発されています。これらの超解像顕微法は、生物試料において、シナプス、ゴルジ体、および核膜といった細胞中の各サブオルガネラ構造の詳細な空間分布を得るために用いられています。一方、EUVから軟 X 線、硬 X 線に至る領域では、使用される結像光学素子に、波長の短さに伴い高い加工精度が要求され、回折限界解像度を実現するには、加工精度の飛躍的向上が長年の課題でした。
しかし、近年の極紫外光露光などによる微細加工技術の発展や高輝度放射光を利用した計測技術の発展などに伴い、この技術課題に対する大きな前進が成し遂げられています。ただ、回折限界で解像度が制限される原理は変わらないので、回折限界を小さくする、すなわち開口数を大きくする努力が結像光学素子開発に引き続き必要であると言えます。しかしながら、なかなかコスト的に見合わない現実も指摘されます。
そこで本研究会では、冒頭で述べた幾つかの超解像法、これらをX線領域へ展開することは可能かどうかについて考えてみます。それが実現すれば、EUV・X線顕微鏡分野は劇的に変革され、可視光領域と同じように広い応用展開も期待できます。その可能性を探ることを目的とし、可視領域で実現されている超解像法の原理を学ぶとともに、EUV・X線領域ならではの課題と展望を議論します。